ゆと里スペース

いなくなってしまった仲間のことも思い出せるように。

特例法を必要とするのは誰か?

この記事では、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」)について、この法律を必要としている状況にある人とはどんな人たちなのか、わたしなりに説明したいと思います。昨年には特例法の一部に違憲判決が下り、大きなニュースにな…

心でも身体でもない「生活する性別」について

この記事ではこれから、「生活する性別」という概念を紹介します。この概念を手に入れることで、トランスジェンダーの人たちの生きる状況がよく理解できるようになるからです。反対から言えば、この「生活する性別」という発想を持っていないと、トランスの…

「心の性」と「身体の性」をやめるべき理由

この記事では、トランスジェンダーの人々について説明するためにずっと用いられてきた「心の性」と「身体の性」という表現について考えます。わたしが誰か知らない方向けに自己紹介をしておくと、わたしは『トランスジェンダー問題』(明石書店2022年)の訳…

2023年の振り返り

はてなブログの機能で「去年のあなたのエントリを読み返しましょう」みたいな提案がメールで届いていた。去年「2022年の振り返り」を書いていた。12月30日。 yutorispace.hatenablog.com 読み返して驚いた。自分では今年(2023年)の仕事だと思っていたこと…

特例法の諸要件はなんのために存在するのか?

特例法の4号要件(不妊化要件)に対して、明日(10/25)憲法判断が下る。違憲判決となれば4号要件は失効し、性別変更要件は大きく緩和される。5号要件についても、憲法判断がなされる可能性がある。 1.有害な発想 特例法については、いわゆるトランスジ…

特例法の4号要件は「手術」を求めているのか?

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」)の4号要件を、わたしは「不妊化」要件と呼ぶ。これには理由がある。この要件は「手術要件」と呼ばれることもあるが、わたしはそれらの呼び方を採用していない。それには理由がある。 呼称…

フェミニズムとアイデンティティの政治(NHKカルチャー青山)

明日、9/29(金)NHKカルチャー青山さんにて、清水晶子さんと2度目のフェミニズム対談(?)をやります。テーマは「フェミニズムとアイデンティティの政治」。伝説的に楽しかった昨年の講座「トランスジェンダーとフェミニズム」を受けて、今年も講座が実現…

トランスヘイト言説を振り返る(wezzy)

『トランスジェンダー入門』の発売から、来週で2カ月になります。この間、ずっと勢いも衰えることなく書店さんでも手に取っていただいてるということで、著者としては安心しています。朝日新聞にも載っていましたが、4刷で2万部弱が出ています。 刊行記念…

フェミニズムがフェミニズムであるために(エトセトラブックス)

『トランスジェンダー入門』の発売から5週間ほど経ちました。ありがたいことに4刷も決まり、一時期は在庫不足がいろいろ懸念されてもいましたが、現在はネット書店でも実店舗の書店さんでも、問題なく発注数が出回っているのではないかと思います。 『トラ…

「まずは現実を知ることから」(B&B書店)

『トランスジェンダー入門』の発売から3週間が経ちました。この間多くの方に手に取っていただき、ありがとうございます。ただ、初版があっという間にはなくなってしまったため、在庫僅少状態が続いています。早く2刷・3刷が行き届くとよいのですが。 『ト…

『トランスジェンダー入門』関連情報(随時更新)

『トランスジェンダー入門』に関連する情報を以下にまとめています。 1.出版情報、2.イベント情報、3.書評等、 4.メディア出演 5.その他 1.出版情報 ・2023年7月14日。集英社新書として発売されました。・7月20日重版(2刷)決定。7月27日重版…

『トランスジェンダー入門』刊行記念イベント:代官山蔦屋さん

『トランスジェンダー入門』が発売されてから約2週間が経ちました。その間、発売4日で重版が決まり、それから1週間ほどで重版(3刷)が決まりました。本当に多くの方に手に取っていただき、ありがとうございます。 そんな書籍の、最初の刊行記念イベント…

『トランスジェンダー入門』内容紹介

再来週7月14日、新書『トランスジェンダー入門』が発売されます(集英社より)。周司あきらさんとの共著です。周司さんにとっては『トランス男性による トランスジェンダー男性学』(大月書店2021年)、『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』…

『埋没した世界』刊行記念対談(6/30)に登壇します

今週の金曜日(30日)に、三鷹の本屋さんであるUnité(ユニテ)さんにて、『埋没した世界 トランスジェンダ―ふたりの往復書簡』の刊行記念イベントに登壇します。対談のお相手は、『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』(2021)や『『男がつらい!…

問われているのは、排除

記事を開いてくださりありがとうございます。この記事は、トランスジェンダーに対する差別や排除って、そもそもどういうこと?どうすれば差別や排除をなくしていける?と疑問に思っている方のために書きました。この記事を書いているわたし(高井ゆと里)は…

トランス差別の現状(3)アメリカにおける犯罪被害

トランスジェンダーの人びとが集団として置かれている状況を理解するために、色々なデータを紹介しています。「トランス差別」は、誰かに酷いことを言うとか、そういった狭い範囲の現象として理解できるものではないからです。 最初に紹介したのは、英国学校…

トランス差別の現状(2)全米大規模調査(①概要)

【前書き】 トランスジェンダーの人たちが置かれている状況を理解するには、様々な方法があります。当事者によるエッセイや自伝を読んだり、ブログを読んだり、Youtubeで動画を検索したり、それ以外にもSNSを除いてみたり、トランスジェンダーの人たちが出て…

出版記念イベントについて

『トランスジェンダー問題』(拙訳)が出版されて約5カ月が経った。その間、同書の刊行記念イベントとして、いくつものイベントに登壇した。多くの書店さんなどが本書に興味を持ってくださり、企画が次々と立ち上がったのは、本当にありがたいことだった。…

ジュンク堂池袋店:『布団の中から蜂起せよ』高島鈴さんとトークイベントします

今週土曜日(18日)19時半~21時、ジュンク堂池袋本店さんの主催するイベントで、『布団の中から蜂起せよ』著者の高島鈴さんとお話しする機会をいただきました。同書ならびに拙訳『トランスジェンダー問題』の刊行記念イベントになります。 2/18『トランスジ…

『ホワイト・フェミニズムを解体する』と『トランスジェンダー問題』合同イベントお知らせ

明後日2月5日に Readin' Writin BOOK STORE さんの主催で、わたしの訳した『トランスジェンダー問題』と、カイラ・シュラーさん著『ホワイト・フェミニズムを解体する』の2冊をとりあげたイベントが開催されます。わたしと、後者の監訳者である飯野由里子…

フェミニズムはひとつではない:書籍紹介『ホワイト・フェミニズムを解体する』

明石書店から発売されたばかりのカイラ・シュラー著『ホワイト・フェミニズムを解体する:インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史』(飯野由里子 監訳;川副 智子 訳)がとても素晴らしかったので、紹介を書く。いま、フェミニズムを考え、実践する…

ばらばらにされた1つの権利

2023年の1月6日の朝日新聞オピニオン欄「無関心に向き合う」。石原燃(いしはら・ねん)さんの寄稿に胸を打たれたので、記録を書いている。(…ちなみに、新年のオピニオン欄は「「覚悟」の時代に」という統一的なテーマで寄稿やインタビューが掲載されていた…

東京都現代美術館:ショーン・フェイさんとのトーク(終わりました)

先日8日、東京都現代美術館で開催中の「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフーー柔らかな舞台」展の企画の一環として、『トランスジェンダー問題』に関連したイベントがあり、参加してきた。NEON Book Clubさんがイベントの主催で、いつものブッククラブ…

2022年の振り返り

年末までにどうしてもやらなければならないことが終わった。お正月までは、あと論文を直したりゲラを見たり本の最終校を直したりする程度に留めて、温かい服を買いに街にでかけたりしたい。 2022年を振り返る。 アウトプットだけみたら、結構いろいろ出した…

『トランスジェンダー問題』を翻訳するとき明石書店にお願いしたこと

記録のために書いておく。わたしはショーン・フェイ著『トランスジェンダー問題』(The Transgender Issue)の訳者だ。今年の9月末に翻訳が刊行された。翻訳権を取得した明石書店から仕事の依頼が来たのは、去年の10月の下旬。イギリスで原著が出たのが去年…

トランス差別の現状(1)英国学校調査

【前がき】 これから「トランス差別の現状」という題で、海外の調査結果などをいくつか紹介していきます。それらの調査結果はインターネットで誰でもアクセスできますが、英語で書かれているため、日本語圏の皆さんに少しでも内容を紹介したいというのが目的…

NHK文化センター講座:報告(楽しかった)

先週の土曜日(3日)、NHK文化センターの講座「トランスジェンダーとフェミニズム」が開催された。わたしが訳した『トランスジェンダー問題』の刊行記念イベントの一環でありつつ、清水さんとこのテーマについて自由に話す機会となった。 イベントは先週終…

「紀伊国屋じんぶん大賞」に投票しました

紀伊国屋さんの「じんぶん大賞」の季節になりました。一応ランキングも発表されるので賞レース的な雰囲気もありますが、この1年で刊行された人文書をみんなで振り返る、振り返りイベント的な側面がわたしにとっては楽しく、今年も「どの本が選ばれるかな」…

NHK文化センターで清水晶子さんと特別対談します:フェミニズムとトランスジェンダー

イベントのお知らせです。 今週末の12/3(土)NHKカルチャー青山(NHK文化センター青山教室)にて、『トランスジェンダー問題』に解説も書いてくださった清水晶子さんと特別対談「フェミニズムとトランスジェンダー」をします。この講座は『トランスジェンダ…

近くて遠いあなたと、フェミニズム

この記事は、近藤銀河さんによる『トランスジェンダー問題』の書評を紹介するものです。銀河さんの書評が掲載されているのは「ちくまweb」という筑摩書房のサイト、「昨日、なに読んだ?」という書評リレーの1つがその書評です。以下で読めます。 www.webch…